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乾いた足音と心臓の音が、いいかげん逃げまわることにうんざりした脳みそを切り替えさせた。
追い掛け回される人生にケリをつけるべく、男は懐に仕込んだ銃に手をかけた。
くそ、返り討ちにしてやりゃいいんだろ。
逃げ込んだ先の地下道の壁にもたれ、あがった息を整える。

 



「よう、ゲームオーバーだぜ」
「よくいう」

対峙した男の手にも黒光りするものがある。
どちらも引かない構えだ。
じりじりと均衡が崩れる瞬間を、恋焦がれた。

遠くからサイレン音が近づき、派手なブレーキ音を立て、地上部に到着したことを知らせてきた。
追われる立場から追う立場への逆転劇はあっけなく訪れた。

「おあずけだ。ポチ」
「だれが、ポチだ! 」
頭にきて、ついうっかり手元の銃をバカの胸元に投げつけた。瞬間、それはなぜか、マシンガンの類に変化した。何しやがる! と怒気のあがった声でバカも銃を投げつけてきた。あれっと思った瞬間、それはバズーカ砲に変化した。
つかさ、んなもん持ってなかっただろうが!

唖然としている間に、どやどや乗り込んできたお仲間にしょっ引かれてバカは目の前からいなくなった。
バズーカ、ありえねェ~し。と、残されたハズのものはまたも変化し、トカレフもどきに変わっていた。
見渡すと自分も含めてその場には、5人残っていた。
証拠隠滅とばかり、銃をばらばらに分解することに夢中になった。
あれ、証拠隠滅ってそもそもこれがなきゃバカの罪状どうなんんだ!?
と疲れた頭で考えるが、後悔先立たず、もう手の中にあるものは、どうみたってくず鉄のかたまりだ。
ため息をついて、自分のまわりにいる4人を眺めたら、アホか?って顔してた。
ほっとけ! 
どうやら、俺は麻薬取締りのおとり捜査官らしい。詳しいことはよく知らない、忘れた。

ぼ~としていたら、地上部から二人組みの綺麗なお姉さんが降りてきた。

「リーダーはどなた?」
4人が俺をかえりみる。なるほど、俺がリーダーらしい。なんか嫌な予感しかしねェし。
どうみたって、味方とは思えねェ感じなんすけど。

「上にどうぞ。サバトの準備が整いました」

はい? サバトってアレか? 悪魔呼び出して、契約しちゃうヤツ、さしずめ俺は生贄の子羊ちゃんって役柄か?
は~ご大層なことに、さっきまで地面だったはずが、階段を昇った先は、なんでかしらんが、海上レストラン。しかも、円形……魔方陣仕様だ。
どんなんだ!? それ? 
しかも生贄は、やっぱり俺らしい。
悪魔、騙くらかすほどの知恵もねェし。
でもって、呪文を唱えてるヤツは、なんだこりゃ。どうみたって日本の妖怪全集に載ってるだろ!お前!ってヤツだ。脱力した。悪魔呼び出すのに、それってアリなのか? なんだよ、その水木しげる画みたいな妖怪ツラは!
思わず、叫んじまったじゃねェか!

「キタローさん! キタローさん! 助けて~キタローさん!!! 」
三回ほど叫んだとき、脳裏に、先週の終わりアニメがよみがえった!

海に沈んでいくキタロー、海面に浮き上がってきたちゃんちゃんこ。
キタロー死す。

ダメじゃん! キタローこれねェじゃん!!!
焦ったら、涙ががんがんでてきた。

窓にすがりついて
「キタローさん、キタローさん、たすけて……キタローさん」

このあたりで、泣く自分を外側から冷静に突っ込みいれる自分に気がつき始めた。

キタロー来れねェなら、自力で逃げるぞ!
と、正面のドアから逃げようとしたら、体が縛り付けられたように、レストランから出れなくなっていた。

なんだよ! それ! 
もがきながら、外の通行人を見たら、イタ!!!

「キタローさん! 助けて!!!」
5人のキタロー、しかもウエンツキタロー。
あっ? はずれかな?
「キタローつったら、おれたちのおっかけにんな名前のヤツいたな」
どうもこいつら、お笑いバンドかビジュアルバンドの類らしい。
焦ったおれは
「どうでもいいから、キタロー連れてこい!!!」
と叫んでいた。

♪たらった~たらった~たったったったっら~♪

どっかで聞いたメロディが耳を刺激した。

これは?

家電の保留音だ!
一気に意識が覚醒した途端、


キタロー!ってなんだよ!!!!

爆笑してしまった。

昨日、のん気に昼寝していたときにみた夢です。
どんなアホ夢だ。キタローのあたりで、どんなんだ!?と半分意識が戻りかけてまして、片っ方で突っ込み入れまくりながら夢をみていたので、泣きながら叫ぶあたりで、脳みそは半分笑ってました。
そんなアニメ、見てないしな。


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